+Hard To Say I'm Sorry−後編−+





「オレの部屋がこっちでお前は隣りな」
ルームキーを投げて寄こし、じゃあなと手を振り部屋に入る。
ドアが閉まる頃にキーを差し込む音が聞こえたのを確認して中へと進む。
スーツの上着を脱ぎベッドの上に放り投げネクタイを少し緩めてもう片方のベッドへダイブ。
「…………。」
息を吐くと緊張していたのか肩の力が一気に抜けた。
おいおいこれからだってのに大丈夫かよ!と自分で突っ込みを入れる。
正直アイツが何も言わないでくれてよかった。
何か問い質されそうなもんなら何を言い出すかわからない。
明日の任務が終わるまでこのおしゃべりな口を何とか黙らせとかないとな。
それとも……正直に話してしまおうか。
そんで無理やりやっちゃうとか?
いやいや、それは流石に無理だろオレ。
あーカミサマ、どうやったらオレの恋は報われるんですか?
悶々と出口の見えない迷路を彷徨ってる内にオレはいつの間にか眠っていた。







インターホンが鳴ってる音で目が覚めた。
よく眠っていたのか数時間が経過しており、窓を見やれば景色は夜景に変わっていた。
また一つピンポーンと音がしてオレはベッドから起き上がりドアに向かう。
相手なんて見なくてもわかってる。ってかアイツしかいないだろ。
ガチャっとドアを開けば想像通りの人物が立っていて嬉しくて涙が出そうだ全く。
「何か用か?」
頭をわしゃわしゃと掻きながら欠伸をする。
「……寝てたのか?」
「ん、ああ。」
まさかそれを確認しに来た訳でもないだろうし、先を促す。
「明日の件で話がある。」
任務の事で話があると言われれば断れない事を知っていて言ってるんだろうかこの男は。
「入れよ。」
仕方なく部屋に通してやるとすっとオレの横を通り過ぎて行く。
微かに石鹸のいい匂いがしたのはオレの気のせいだろうか。





「何か飲むか?」
冷蔵庫を開け自分の分のペットボトルを取り出す。
今の今まで眠ってたから喉が渇いていた。
いい、とだけ返事が返ってきたのでそのまま扉を閉じる。
ゴキュゴキュと喉を潤しながら自分の心も落ち着ける。
「で、話って?」
最終確認でもしようってところか、それとも一人でやるとか言い出すのか。
ベッドに腰掛ける事無く立ったままの状態でいる相手に目を向ければ同じ様に向こうもこっちを見ててドキッとした。
だからさり気無さを装って眼を逸らす。
そうすると後ろの方で溜め息が聞こえた。
「どういうつもりだ?」
「何が?」
「言わなければわからないのか?」
「だから何の話だよ?」
アイツが何の事を言ってるのかは薄々わかってる。
けど言いたくない事もあるんだよ。
あくまでとぼけるオレに珍しく相手はよく話す。
「ここ数ヶ月、いやもっと前か。俺の事を避けているだろう。」
あー核心に触れやがった。
「何故だ?理由を言ってみろ。」
うわー偉そう。
「理由聞いてどうすんの?」
理由なんか言った所で何も変わらない……。
「話がそれだけなら出てってくれ。」
「デュオ!」
ドアの方へと歩きかけていた足が止まる。
久しぶりに名前を呼ばれた。
オレは昔からアイツに名前を呼ばれるのが好きだった。
最後に呼ばれたのはいつだったか……思い出せない。
だけどオレの名を呼ぶその声だけは今もハッキリと覚えている。
「デュオ。」
名前を呼ばれてゆっくりと振り返る。
「!」
思いがけず至近距離に相手がいてビックリして思わず後ずさりそうになったが、腕を掴まれてそれは叶わなかった。
「離せ!」
「駄目だ。」
掴まれた腕から伝わる体温がオレの決意を溶かしてゆく。
「俺が……何かしたのなら謝る。」
「何もしてない。」
謝ることなんて何もない。
そんな言葉がアイツの口から出るなんて……そんなにオレの態度はひどいのか?
「だったら……何故だ?答えろデュオ!」
あーもう!知らねぇからな!
「教えてやるよ、その理由。」
オレは掴まれてる腕をグッと引き重力で相手がこっちに倒れてくるのを捕まえ顎を手で押さえそのまま口づけた。
触れるだけのキスなんかしてやらない。
そのまま口を開かせて舌を差し込んでねっとりと絡めてやる。
ゆっくりと口腔内を貪ったあと体を離せば相手の口から飲み込めなかった唾液が零れた。
それを親指でそっと拭ってやる。
「何で抵抗しないんだよ。」
自分からしといてあんまりだとは思うが思っちまうのは仕方がない。
「抵抗する理由がない。」
「へ?」
何ともまぁまぬけな声が出た。
「お前の理由というのは今のか?」
「お、おぅ。」
何だか形勢逆転か?さっきまでの勢いはどこに行ったデュオマックスウェル?押されてるぞ。
「俺の用もこれだ。」
そう言って今度は反対にキスされた。
「んっ!」
さっきオレがしたのと同じくらいか、いやそれ以上か……。
息をするのも苦しいくらい貪られて舌を絡められて噛まれて……。
気をしっかり持ってないと腰が砕けそうだ。
「ふ…っ……はぁ。」
ようやく離してもらえた時には息をするのも苦しいほどだった。
「な…んで……。」
「お前と同じ理由だ。」
ってことはなんだ?頭がぼーっとしてて上手く思考が回転しない。
オレと同じ理由ってことは、お前もオレの……えーーーっつ!
ありえない!断じてありえない!
アイツがオレの事スキだなんてあるはずがない。
「か、からかってんのか?」
「からかいでこんな事するはずがないだろ。いい加減わかれ。」
そう言って今度は軽く触れるだけのキスをされた。
わかれったってそんなの無理に決まってるだろ!
動悸が激しい。
頭がふらつく。
顔が赤い。
ヤバい、ヤバい。
「と、とりあえず離してくんない?な!」
「駄目だ。」
ええっ!いやもうお願いしますホントに。
焦っているオレを尻目に今度は首筋に唇を押しあてられてビクッと身体が跳ねた。
「ちょ!ヒ…ヒイロッ!」
「やっと呼んだな。」
そういえばオレも久しぶりに名前を呼んだ気がする。
ずっと呼びたくて、でも呼べなくて……でも呼んでしまえば簡単で。
「デュオ。」
「は、はい。」
耳元で甘く囁かれた言葉。
「ウソ?」
「嘘じゃない。信じろ。」
そう言ってまたキスされた。
そのままヒイロの手が背中に回りYシャツを引き上げていく。
ってなんでオレが脱がされてんだよ。
「ストップ、ヒイロ!」
「何だ?」
「なんでオレが脱がされてんだよ!」
「決まってるだろう。お前を抱くためだ。」
そんなキレイな顔して抱くとか言うなよ、恥ずかしいだろう。って違う!
「オレがしたいんですけど……。」
何でそんな意外そうな顔するんですかヒイロさん。
「オ、オレの方が背が高い!」
「そんなことか……。」
あっ今鼻で笑ったなコイツ。
「うわっ!」
言うなりベッドに押し倒された。
「こうすれば関係ない」
ごもっとも。じゃなくて……。
「オレの方が慣れてると思うし……。」
「じゃあ大丈夫だろう。」
いやそっちの方じゃなくてね……。
「えとオレの方が……。」
「デュオ。もう黙れ。」
オレが何か言うたびにひとつまたひとつとキスされて、もう上とか下とかどうでもよくなってくる。
「あーもうクソッ!」
オレは覚悟を決めてヒイロの首に手を回して抱き寄せた。
そしてずっと言えなかった言葉を耳元で囁いた。
「知っている。」
生意気な言葉とは反対に向けられた笑顔があまりにもキレイで思わず見惚れてしまって顔が熱い。
「優しくしろよな?」
「……善処する。」
そしてオレはヒイロに身を委ねた。



こんな事だったらもっと早く素直になればよかった。











あとがき
コンセプトは「ニイチのようなイチニ」でした、多分。
何を思ったのかちょっと趣向を変えてみようかなーなんて。
最終的にラブラブだと(もう何でも)いいと思います。

2009.06.12     葵